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mixi脆弱性報告制度:参加者として感じたこと

mixiの脆弱性報告制度の総括記事を書こうと思い、報告した脆弱性の評価が確定するのを待っていたのだが、最後の一件の評価がなかなか戻って来ないため問い合わせたところ、修正方法を含め時間がかかる、との事だった。

そのため、一件評価が未確定のものが残ってはいるが、評価が出るのを待っていたら遅くなりそうなので、先に今回の脆弱性報告制度に参加した感想を書いてしまおうと思う。

報酬

報告した脆弱性:15件
評価された脆弱性:4件
(評価が確定していないものが1件残っている)

いただいた報酬:現時点までの合計 ¥475,000(Amazonギフト)

感想

よかった点
・報酬が高額
・「mixi」という大手企業の色々なサービスを思う存分検査できた点。超楽しかった。ずっと続けたいぐらい。

悪かった点
・参加者への応対
・脆弱性の評価の判断基準の不明瞭さ

mixiさんの制度運用について思うこと

私が以前書いた記事のせいもあって、mixiさんに批判が集まる形になっているが、とりあえず参加者として思うところを少し述べてみようと思う。

私が報酬を頂いた脆弱性を発見したサイトは、mixiアンケート、youbride、YYC、ショッパーズアイだが、サイトの規模に関わらず、mixiさんからは高額な報酬(10~12.5万円のAmazonギフト)をいただくことができた。

特に、「ショッパーズアイ」というサイトはmixi本体と比べるとかなり参加者の少ない小規模なサイトだと思うが、このサイトのXSSであっても、特にケチるようなそぶりもなく、公式ルールの「脆弱性と報酬額の例」のXSSの場合の金額、12.5万円(Amazonギフト)が支払われた。

mixiさんが本当にできる限り報酬をケチりたいなら、「このサイトはユーザー数がmixi本体と比べるとかなり少なく、影響範囲も小さいので、報酬は1万円で」みたいなケチり方もできたと思うし、そのほうが批判の対象にもなりにくく、スマートだったと思う。
でもそれをしなかったので、運営側は必ずしも「何が何でも賞金をケチりたい」というのではなかったように思う。

しかし、超高額報酬が出てしまった際には、賞金支払いをケチっているかのように見える挙動があり、疑念を打ち消すような判断基準の情報開示もなかったので、炎上して叩かれてしまったように見える。

やはり、この手の脆弱性発見コンテストでは「企業側の評価基準の透明化」が絶対的に必要なのだろうと思う。
下手に「自社の基準で」でやってしまうと、どうしても「有益な脆弱性報告をただ取りされた」的なトラブルが起こってしまう気がする。

サイボウズの脆弱性発見コンテストでは、 脆弱性はCVSS v2 を用いて評価となっていた。例えばこのように客観的な指標を導入するのも手なのではないかと思った)


あと、別件で指摘したいのが、「脆弱性に賞金を出す制度」というのは、本来、クラッカーが発見した脆弱性を悪用したりその手のマーケットで販売したりするのを防ぐために企業が脆弱性情報をクラッカーから買い取るという趣旨があるものだが、今回、私の発見した例の脆弱性にしろ、このブログの方の発見した脆弱性にしろ、すごい危険性がある状態を発見し、それを悪用せずに企業に情報を渡したのに、企業側が「悪用しなかった」ということに対する対価を払わなかった(ように見えた)。この点は良くなかったと思う。

危険な脆弱性を発見して報告しても正当な対価がもらえないなら、今後は報告なんかせずに見つけた脆弱性を直接悪用するか、ブラックマーケットに売った方がいいや、となってしまうのでよろしくないと思う。(私は逮捕されたくないので仮に全く利益が得られなくてもIPAとかに報告してしまうと思いますが、一般論として)

既知であろうが同様の脆弱性が他にあろうが、「脆弱性を悪用しなかった」という点に対しての報酬はいくばくか払った方が良かったように思う。

まとめ:「次回に期待」

mixiさんの脆弱性報告制度は、自社および子会社の運営するサイトの本番環境を脆弱性検査希望者に全公開するという「こんなに緩くていいんですか??」という荒っぽさがあり、たぶん「攻撃なんて毎日腐るほど来ているのだから、脆弱性コンテストに本番環境使っても大丈夫やろ」というノリの豪胆な人がmixiの中にいたのだと思う。

それで、そういうノリでとりあえず開始してみたところ、起こる事態の想定なども甘いままボロが出てしまった、というところがあったのではないかと思う。(例えば対応人員足りなくて評価に時間かかったり)

ただ、その大雑把さのおかげで私としてはmixiという大手企業が運営する多数のサイト(本番運用中)をブロックや通報を恐れずに検査することができ、普通に脆弱性検査の体験学習として面白かったし、ためになった。

mixiさんの試みは、試み自体としては非常に良い試みだと思ったし、今後どんどんほかの企業も同じような試みをやってほしいと思った。

私としては、あまり国内でやられていない「高額賞金の脆弱性報告制度」という冒険を、本番環境で「えいや」でやってしまったmixiさんの男気は評価されるべきだと思う。

ただちょっと運用面では色々まずかったようにも思うので、次回やるときはそのあたりを改善してほしいと思う。

余談:Amazonギフトについて

今回のmixiの脆弱性報告制度の賞金はAmazonギフトで支払われた。

些末な事ながら、Amazonギフトは1~数万円程度の報酬には向くと思うが、それ以上の高額賞金には全く向かないと思う。
大きな理由としてはAmazonギフトには有効期限があり(一年間 有効期限はギフト券の券種によって一~三年のものがあるようだが、今回mixiさんが賞金の支払いに使ったのは有効期限一年の券種だった)、その間に使い切らないと無効になってしまうからだ。

高額になればなるほど、その一年縛りがきつくなるため、大金もらったのに素直に喜べず、一年以内に使い切るために何を買えばいいのかで悩まないといけないという、ジョジョのどこかのシーンみたいなことになってしまい、大金いただいたことはありがたいのに、一年縛りのせいで悩みが発生してしまう。(頂き物にたいして文句を付けるのは勇気がいるが、たぶん今回mixiさんに高額賞金もらった人はみんなこれで悩んでると思う)
この手のコンテストの賞金は、2~3万円以上の額になる場合は現金で支払った方が良いのではと思った。


※5/17追記:
Amazonギフトの有効期限は延長できるという噂を聞いたので、Amazonカスタマーサービスに電話してAmazonギフトの仕様について聞いてみた。
ネット上の情報では申請すれば簡単に期限を延長できるという感じだったが、実際にサポートに聞いてみると、あくまでも特例措置で、必ずしもホイホイやってくれるようなものでもないようだ。
オペレーターの方によると、

・Amazonギフト券の残高がある状態で有効期限を迎えてしまうと残高も無効になる
・ギフト券の有効期限の延長は、お客様の事情をお伺いして、上司の判断を仰ぐ必要がある。通常のサービスではなく特例的な対応のため、申請していただいても確実に延長が約束できるわけではない
・延長が可能だった場合でも原則として一年しか延長できない(それ以上延長できるケースがあるかどうかは不明)

とのことだった。
というわけでやはりAmazonギフトは、原則として有効期限内に使い切らないといけないものであるようだ。

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